DIARY 宇宙の戯言

愛と共創と挑戦 2021年の気づき

1月
建設現場での個展『alive』。
“人に見せるためにつくってるんじゃない”と気づいた。
つくるということがわたしにとって生きているということで、生きていること自体が表現していることなんだと。
とても愛おしいかけがえのない時間だった。
観にきてくれた親友が『侑季、産んだな〜』と言ってくれた。
その言葉通り、まるで出産したかのようだった。
2018年からはじまった原点回帰がここでいったん終結したのだと感じた。
そして、次のフェーズへ行く準備が整った。

2月3月
ミュージカルの衣装制作。
自分主体ではないクリエイティブのプロジェクトで、チームの一員として役割を与えられて取り組むのははじめてだった。
そして、自分じゃない、他の誰かの作品を自分の体内に取り入れてじっくりと温め膨らませて、再びこの世界に産み落とす。
これもはじめての経験だった。
自分の知らない世界で戦ってきた表現者たちの魂が交わり、融け合って生み出される新しい世界。
わたしの人生において、このタイミングで、チームで志事をするということの意味。このタイミングだから見出せた可能性。
そして、尊敬できる人たちが周りに増えていく喜び。
この世界に夢中になれた。感謝しかない。


と、同時に、自分の体力と精神力の限界を超えることになる。
全身全霊をかけて、集中し、没頭していても、本番を駆け抜ける体力はそれまでなら残っていた。でも、この場合はいつもと明らかに様子が違った。
その変化は、これからわたしが挑んでいく世界は、一人では完結しようがないということを教えてくれた。

春〜夏
蓄積されてきた問題に向き合う時がきた。度々実家に帰ることになる。その中で、精神的にトドメを刺されたような出来事があり、それまでの疲労もあってか、子宮に激痛が走る。大きな子宮筋腫が見つかる。すぐに手術はできないと。
これについての詳細は割愛するが、年齢やキャリアなど色々と想うところがあり、これをきっかけにわたしは、わたしのことを誰も知らない場所へ旅に出た。そこで、今まで関わったことのない人たちの人生の一部に触れた。ある意味でこの国の平均を知った。そして自分が今いる世界が平和で心地良いものだと改めて気づかされた。

あんまり言いたくないけど、実は鬱のような症状に苦しんでいた。筋腫のせいもあったかもしれない。コロナ禍のせいもあったかもしれない。原因は色々と重なっていて、ひとつじゃないと思う。
朝起きて、顔も洗えない日もあった。
どうしてしまったの、わたし。
こわかった。
学校にいきたくないと、じっと鏡の前に座っていたあの頃を思い出した。

その間にも、調子のいい時は創作していた。
未だ実験途中だが、この点は来年繋がるだろうと思う。

夏の終わり頃
レッドソファを気にかけてくれている方と久しぶりに再会した。
そのおかげで、2年ぶりにレッドソファと逢えた。
レッドソファが、再び人と触れ合えた。

夏の間のホルモン治療を終え、9月末に腹腔鏡手術をした。
術後、しばらくはまだ不安もあったが、身体の声を聞きながら過ごしていた。あとは時間薬だ。

春から動いていた補助金申請のプロジェクト。
足止めを食らっていたけど、ようやく申請できる段階に来た。
一年の半分をとうに過ぎていたため、スケジュールを考慮し、内容を見直した。
ここで、レッドソファがキーワードとなった。ごく自然な流れだった。
当初やりたかったものとはまったく違うけれど、この流れにすべて委ねたいと思った。

11月
下北でアートと音楽とパフォーマンスが融合された一夜限りのイベント『さらけだせ、愛。』を決行。本番1週間前に補助金の採択通知がきた。一気にスピードアップして最後まで走り切った。
大阪編の開催も決断した。

純粋無垢な若者たちの愛とか苦悩とか葛藤をぶちまけてさらけだした混沌と熱狂の時間を経て、その反動でわたしは、究極に研ぎ澄まされたプロフェッショナルな空気に頭の先からつま先まで痺れるほど浸りたいという欲望に駆られた。
これはきっと来年実現するだろうと確信している。

12月
続いて大阪編。
2年前にニューヨークで出逢った表現者たち、今年出逢った表現者たちをキャスティングした。
わたし自身が魅了された素晴らしい才能たち。どんどんイメージがふくらんでいく。下北編の時から言っていた、「発表会形式にしたくない、ぜんぶで一つのショーにしたい」という想いをカタチにするべく、時間がないながらも出演者と対話しながら、世界観を構築していった。
一人一人が壮大な宇宙を持つ魂たち。凄まじいエネルギーがわたしのからだじゅうを駆け巡る。関わる人全員が主人公の物語を紡ぐのは容易ではなかった。多くの関係者に助けられた。
結果、自分でも不思議だが、春頃描いていたやりたかったこと、スケジュール的に見送ったあのプロジェクトのプレのようなものをする事が出来た。
物語と音楽と身体表現でひとつの宇宙をつくった。
はじめての演出作品だ。
この世界をもっと深めていきたいと思う。
次はもっと時間をかけてじっくりと。
想像を超えたリアルを目の当たりにし、終えて数日は自責と自問に襲われたけれど、それも必要だとわかっていたから、戸惑いは一切なく。

わたしが描いた未来は、両手を広げ「さぁ、おいで」と言ってくれている。
2年半前のレッドソファの時に感じた、目の前にまっすぐに光が差しているあの感覚。
光の輪郭がさらにくっきりとしてきた。
これからも導かれるままに、突き進むのみだ。