2022-06-28
コハクイロノマチ(仮)

“もしも、南吹田琥珀街が舞台の物語があったら”
絵本のような、映画のような、演劇のような。
映像はありません。
音楽もありません。
どんな声、どんな音が聴こえますか。
どんな匂いがしますか。
どんな温度でしょうか。
どんな色が見えますか。
想像してみてください。
本作品は、この場所を訪れて、
見て、感じてくれたあなたの想像力との
コラボレーション作品です。
琥珀街の周辺を
お散歩してみるのもいいかもしれません。
どうぞ、また帰ってきて、
もう一度向き合ってみてください。
あなたの中だけに存在する
コハクイロノモノガタリ。

真っ青に晴れたなら ほほえみ返し
雨が降れば 共に泣く
何年も 何十年も
風は気まぐれに陽射しと戯れ合い
川面をゆらゆらと編んでゆく
気づかれなくとも
ただただ自然に
なるがままに
子は大きく育ち
おとなは小さくなって
やがて眠りにつく
なるがままに
わたしもだんだんと色褪せてきた




この物語を構成する7つのレイヤー
01;雨上がり
02;語り/白ゆり荘の青い屋根
03;陽の光
環境音①
04;風の囁き
05;雨
ト書
06;主題歌「コハクイロノウタ」
環境音②
07;窓の灯り

わたしは長らく視覚芸術に携わる者として、完成させたビジュアルを提示してきました。今回は、その”キー”となるビジュアルをあえて見せずに、散りばめられた言葉たちを手がかりにして、鑑賞者の方々に情景を想像してもらう、物語を勝手につくってもらう、という実験的な展示でした。
昨年、ご縁があって「演出」というクリエイティブに魅了される機会があり、自身も小規模ながらチャレンジしてみて、受取手の想像力を掛け合わせれば作品は無限大に広がっていくのだと未知のエネルギーを感じました。それはとても大きく深く壮大で、そして自由なのです。わたしの作品を通して、みなさんにも想像のおもしろさを感じてもらいたいと思いました。
舞台となるのは南吹田琥珀街。2017年にはじめてこの地を訪れてから、いつも気になる存在だった『白ゆり荘』。親しみを込めて言うならば、いわゆる”おんぼろアパート”でした。青い屋根瓦、鉄の外階段、手書きの看板。今思えば一目惚れだったかもしれません。
当時はまだ南吹田駅が出来ておらず、東淀川駅から歩いて神崎川に架かる大吹橋を渡り、琥珀街へ向かっていました。出迎えてくれるのはいつも白ゆり荘の青い瓦屋根でした。
年老いたその瓦屋根は、いつ見ても大空を仰ぎ、静かに息をしているようでした。晴れの日も雨の日も、空の色を全身で受けて、いろんな青を見せてくれました。
そんな白ゆり荘も、ついに工事がはじまったのが、プロジェクトがスタートしてから4年が経った2021年。実は少し寂しいような気持ちもありました。もういなくなってしまうのか・・・と。
でも、瓦屋根を残すことになった時に、これはきっとこれまでと同じリノベーションではなく”オマージュ”なんだ、とわたしの中で腑に落ちたのです。
時の流れに抗わず、すべてを受け容れ共に生きていくまちの象徴として生まれ変わった白ゆり荘を祝福したいと思っていました。
この作品は、南吹田琥珀街に捧げるもの。
語りの言葉は、何十年もの月日をこの地に寄り添い見守ってきた白ゆり荘の声に心の耳を傾けて書いたものです。
南吹田琥珀街に、愛と尊敬の心を込めて。
